【おすすめの本】育休世代のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?

1997年以降、共働き世帯が専業主婦世帯を超え、結婚後も約7割の人が就業を続けるようになった。

しかし、約半数の女性が出産後に会社を退職するという現状。
仕事を続ける女性は、仕事と育児の狭間で、色んな想いを抱え悩み続ける。


「子どもを産み、育て、自分の仕事でもやりがいをもって働きたい」
それは理想ではあるかもしれない。
けれど実際、産むことを選んだとしても、男性のように仕事が忙しいからといって、家事や育児を誰かに放り投げることは、正直いって難しい現実がある。
  
「子育ては女性だけの仕事なのか?男女平等とは何なのか?」
 私自身も出産後、何度もこのことで悩み続けた。
そして葛藤やうまく言葉にできないモヤモヤ感。
    
しかし、先日私が言葉にできなかったモヤモヤを言語化してくれる本に出会えたので、ご紹介したいと思う。
   
その本とは、

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書) [ 中野円佳 ]

価格:950円
(2018/5/10 17:33時点)
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今現在、家事や育児やお仕事に日々奮闘していらっしゃる女性の方だけでなく、男性・管理職の方々・これから就職する方々にも、是非読んでいただきたい一冊である。

この本の内容について

「育休世代のジレンマ」の著者は、中野円佳さん。
東京大学卒業後、日本経済新聞社に入社。
1人目の育休中に、立命館大学大学院先端総合学術研究科に入り、そこで書いた修士論文がこの本のベースになっている。
 
著者がインタビューをしたのは、有名大学を卒業し、厳しい就職活動を勝ち抜き、育休・産休などの制度が整った2000年代に入社し、20代で結婚・第一子を出産した、15人の総合職女性達である。
  
育休世代の女性たちは、就職氷河期の買い手市場の中で、女性の働きやすさに不安を抱えながらも、多くがやりがい重視で就職活動に臨んだ。

この15人と同年代の私も、やりがいを重視し、一般職ではなく総合職を選んだうちの一人である。
 
当時の就職活動の定番だった第一関門は、自己分析が重要なエントリーシート。
ここに男性と同じように仕事で自己実現することを求められる、「自己実現プレッシャー」があった。
  
その一方で、少子高齢化による労働人口減少の危機感が高まり、政府が少子化対策に躍起になる中、高齢出産や不妊のリスクが取りざたされ、「産め働け育てろプレッシャー」も重くのしかかった。

2000年代はそんな2つのプレッシャーがふりかかっていた時代でもあった。

この本には主に2つの目的がある。

➀なぜ多くの女性は、出産後会社を辞めてしまうのか

②たとえ仕事を続けたとしても、育児重視にシフトし、なぜ仕事の熱意を失うように見えるのか

 

  価値観や職場環境・育児環境の異なる15人のデータ結果から、驚くべき結果が明らかになった。
  
それは、


・就職活動時にやりがいを重視し、出産後も仕事する気満々の「マッチョ志向な女性」ほど、出産後結局退職

 
・逆にワークライフバランスや女性の働きやすさを重視し、子育て優先で時短勤務等を利用してサポートを得ながら、ある程度自分が女性であることを受け入れている「非男なみ女性」ほど、キャリアを継続

 

一見、働く意欲と就業継続の可否が、矛盾しているように思えるような結果だが、働く意欲の高さや努力して頑張ることよりも、女性が働きやすい職場を選んだほうが、就業継続していることがわかる。

ではなぜ「マッチョ志向な女性」ほど退職に陥るのか。
以下の特徴がある。

・マッチョ志向な女性は、最初から女性活用が限定的な企業に入社し、厳しい条件の中に飛び込んで、男なみにバリバリ働く。

・結婚相手はそもそも、自分の代わりに家事育児をしてくれるような男性を選ばない。むしろ、自分と同等かそれ以上にハードな夫と結婚する。
(同類婚の法則)

・また、女々しいものへの嫌悪感から、子育てもしっかり自分でやりたいという意識が強く、育児サポートも得ることをよしとしない。

 

それゆえにマッチョ志向な女性には、以下の➀または②のような状況が、待ち受けている。

➀会社から過剰な配慮を受け、マミートラックに追いやられたり、責任のある仕事が奪われてしまう
→やりがいを奪われたように感じ、意識の上で女性の指定席に押し込められるのは、プライドが許さない
→就労意欲そのものが低下

②仕事量が出産前と変わらず、今まで通り男性と同じように長時間労働を強いられるなどの無視・無関心な厳しい職場環境にさらされていく
→会社では、勤務時間等男なみに働かなければ評価されず、家庭ではケア責任を母親がおって当たり前のごとく期待され、そんな中で両立できない自分を責める
→様々な心理的葛藤を抱え続ける

➀や②の場合、最終的には「子どもにこんな思いをさせてまで」とか「そこまでしてする仕事かどうか」と思いつめ、いっそ競争から降りてしまえと退職。

すると、周りからは「仕事への意欲がなくなった」とか「母性に急に目覚めた」とか女性自身の選択の問題とされてしまうのだ。
しかし、本当はやる気がないわけでも、母性に目覚めたわけでもない。

本人も本当の理由を言わず辞めてしまう為、仕事へのやりがいを見出せなくなる社会の構造は問題視されにくい。
また、企業にもその声は届かないため、変化する機会を失ってしまうのである。

これには、下記のギャップが関わっているとされる。
 
・学校の教育システムにより、男女平等として、女が男なみになることを埋め込まれる

・しかし、社会に出るとケア責任が発生した場合の負担が、極端に女性側に偏っているという社会の実態がある

多くの女性は、出産育児によりケア責任を期待されるようになってから、やっとこの2つの間に大きな乖離があることに気づく。

私自身もずっとモヤモヤしていた男女平等への疑問。
私たちが見ていた男女平等は、男性中心主義的な社会の中で、女性を男性と同じ存在に見なすことを目的とした、形式的な平等だった。
    

では、仕事を継続しやすい「非男なみ女性」には問題はないのだろうか。
 
こちらも、

・部署異動や上司が変わることなどの職場変化で居づらくなる。
・仕事を続けても、ぶら下がりと批判されたり、戦力外通告されて、仕事に面白みが亡くなり、家事や育児の方が魅力的に思えてくる。

これによって退職の引き金になることがある。
 
また、社内でのマミートラックを受け入れたり、ケア責任は女性がするものとして夫の男なみを優先してしまうことにより、企業内でも家庭内でも、ジェンダー秩序の強化につながりやすくなる。
結局これでは、女性活躍推進はなかなか進まない。
 

このようにして、女性の多くは出産後退職してしまう。
これには、このような社会的構造の問題があるのだということが、この本では多くのデータとともに描かれているのである。
  

この本を読んで

自分が今まで、あまり見えていなかった視点を与えてくれる一冊だった。
読み終えたら、じゃあ自分にはこれから何ができるのかを考えてみたくなった。
でも、答えは簡単には見つかりそうにない。

著者は、抜本的な解決として、3つのことを挙げていた。

➀男性が社会的な地位を独占している社会を変えること
②ケア責任の分散を図ること
③ケア責任の価値を上げること

これらのことから、
・ただ女性管理職を増やすのではなく、ケア責任のある人も管理職など意思決定の場に参加させること
・残業規制等を行い、夫にも育児参加を促すこと
・ケア責任を抱えていること自体がマイナス評価にならないよう、管理職が人事評価を労働時間の長短で評価するのではなく、時間内の生産性で判断すること

などが解決策として考えられ、今までのような女性側ばかりが使う育児制度だけを整えたところで、女性活躍推進にはつながらないことが、この本を読んでよくわかった。

ここで私は規制だけでは意味がないと思った事は、夫側の残業規制である。
残業がなくなったからといって、じゃあ家事や育児を手伝おうかとなるかどうかは甚だ疑問である。夫婦間収入格差があれば、なおさらだ。
これは、とても難しい問題だと思う。意識は自分が本当に変えたいと思わない限り、変わらないからだ。
 
また、男性が女性と同等にケア責任を担っていくという場合は、逆に言えば女性も男性と同様に「一生働く覚悟」が必要になってくることを忘れてはいけないのではないか。
   
女性活躍推進のテーマは、女性だけの問題ではない。
一部の人達だけで考えるのではなく、色んな意見を取りいれていく必要がある。
 
すべての女性が、結婚や出産をしたいわけでもないし、仕事で成功を収めたいと思っているわけではない。
女性は、いろんな選択肢がある。だから悩む。
それぞれに生きたい人生がある。それぞれの幸せがある。

よくお金に関する記事で、正社員と専業主婦では生涯賃金に2億円の差があると書かれている。
これらを知ることはけっして悪いことではないが、そこを働く理由にするのは違うのではないかと思う。
多くの女性が仕事を辞めてしまうのは、お金は大事だが、儲けるために自分の大切だと思っているものを犠牲にしたくないと、どこかで感じているからではないだろうか。

日本はどこかみんな同じ考えに統一したがる傾向にあるが、答えを一つに絞る必要もないのではないかと思う。
女性がどの道を選んでも応援され、どの道を選んでも頑張ればまたやりがいを感じられる仕事に戻れる世の中であってほしいと思う。

ただしそうなるには、この本にもあるように女性の誰かが意見を言える立場に上がっていく必要がある。
だからこそ、子育てをしながらも仕事を続ける女性たちを非難せず、応援する気持ちを持つことが大事なのではないだろうか。

女性同士が対立せず、まずは団結することが、最優先なのではないか。
 
是非この本をたくさんの人が読み、「女性の働き方」についてもう一度考えてみてもらえたらいいなと思う。
    
それが小さな一歩になる。
一気には変わっていくことが難しいかもしれないが、小さな一歩が集まれば、きっと大きな一歩になるのではないか。